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(明治四十年四月二十四日法律第四十五号)
平成一五年八月一日法律第一三八号改正版
目次
第一条
この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
第二条
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
一
削除
二
第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
三
第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪
四
第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
五
第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
六
第百六十二条(有価証券偽造等)及び第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪
七
第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪
八
第百六十四条から第百六十六条まで(御璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第百六十四条第二項、第百六十五条第二項及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪
第三条
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
一
第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
二
第百十九条(現住建造物等浸害)の罪
三
第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪
四
第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第二項の罪の未遂罪
五
第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、未遂罪)、第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪
六
第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
七
第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
八
第二百十四条から第二百十六条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪
九
第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第二百十九条(遺棄等致死傷)の罪
十
第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
十一
第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、国外移送目的略取等、被略取者収受等、未遂罪)の罪
十二
第二百三十条(名誉毀損)の罪
十三
第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)及び第二百四十三条(未遂罪)の罪
十四
第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪
十五
第二百五十三条(業務上横領)の罪
十六
第二百五十六条第二項(盗品譲受け等)の罪
第三条の二
この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。
一
第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、未遂罪)及び第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)の罪
二
第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
三
第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
四
第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
五
第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、国外移送目的略取等、被略取者収受等、未遂罪)の罪
六
第二百三十六条(強盗)及び第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)の罪並びにこれらの罪の未遂罪
第四条
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。
一
第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪
二
第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪
三
第百九十三条(公務員職権濫用)、第百九十五条第二項(特別公務員暴行陵虐)及び第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)の罪並びに第百九十五条第二項の罪に係る第百九十六条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪
第四条の二
第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。
第五条
外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。
第六条
犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
第七条
この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。
この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。
この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
第八条
この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。
第九条
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
第十条
主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。
同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。
二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。
第十一条
死刑は、監獄内において、絞首して執行する。
死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで監獄に拘置する。
第十二条
懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上十五年以下とする。
懲役は、監獄に拘置して所定の作業を行わせる。
第十三条
禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、一月以上十五年以下とする。
禁錮は、監獄に拘置する。
第十四条
有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては二十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。
第十五条
罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。
第十六条
拘留は、一日以上三十日未満とし、拘留場に拘置する。
第十七条
科料は、千円以上一万円未満とする。
第十八条
罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。
罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。
罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
罰金又は科料の言渡しを受けた者がその一部を納付したときは、罰金又は科料の全額と留置の日数との割合に従い、納付した金額に相当する日数を控除して留置する。
留置の執行中に罰金又は科料の一部を納付したときは、その金額を、前項の割合で、残りの日数に充てる。
留置一日の割合に満たない金額は、納付することができない。
第十九条
次に掲げる物は、没収することができる。
一
犯罪行為を組成した物
二
犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三
犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四
前号に掲げる物の対価として得た物
没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。
第十九条の二
前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。
第二十条
拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。
第二十一条
未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。
第二十二条
月又は年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する。
第二十三条
刑期は、裁判が確定した日から起算する。
拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても、刑期に算入しない。
第二十四条
受刑の初日は、時間にかかわらず、一日として計算する。時効期間の初日についても、同様とする。
刑期が終了した場合における釈放は、その終了の日の翌日に行う。
第二十五条
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一
前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
第二十五条の二
前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。
第二十六条
次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
一
猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
二
猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
三
猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。
第二十六条の二
次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
一
猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
二
第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
三
猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき。
第二十六条の三
前二条の規定により禁錮以上の刑の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。
第二十七条
刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
第二十八条
懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に出獄を許すことができる。
第二十九条
次に掲げる場合においては、仮出獄の処分を取り消すことができる。
一
仮出獄中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。
二
仮出獄前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。
三
仮出獄前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。
四
仮出獄中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
仮出獄の処分を取り消したときは、出獄中の日数は、刑期に算入しない。
第三十条
拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分によって仮に出場を許すことができる。
罰金又は科料を完納することができないため留置された者も、前項と同様とする。
第三十一条
刑の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。
第三十二条
時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。
一
死刑については三十年
二
無期の懲役又は禁錮については二十年
三
十年以上の有期の懲役又は禁錮については十五年
四
三年以上十年未満の懲役又は禁錮については十年
五
三年未満の懲役又は禁錮については五年
六
罰金については三年
七
拘留、科料及び没収については一年
第三十三条
時効は、法令により執行を猶予し、又は停止した期間内は、進行しない。
第三十四条
死刑、懲役、禁錮及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。
罰金、科料及び没収の時効は、執行行為をすることによって中断する。
第三十四条の二
禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
第三十五条
法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
第三十六条
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第三十七条
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
第三十八条
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。
第三十九条
心神喪失者の行為は、罰しない。
心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
削除
第四十一条
十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
第四十二条
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
第四十三条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
第四十四条
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
第四十五条
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
第四十六条
併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。
併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。
第四十七条
併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
第四十八条
罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。
併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
第四十九条
併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。
二個以上の没収は、併科する。
第五十条
併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。
第五十一条
併合罪について二個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。
前項の場合における有期の懲役又は禁錮の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。
第五十二条
併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。
第五十三条
拘留又は科料と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条の場合は、この限りでない。
二個以上の拘留又は科料は、併科する。
第五十四条
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。
削除
第五十六条
懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者がその執行の免除を得た日又は減刑により懲役に減軽されてその執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときも、前項と同様とする。
併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなす。
第五十七条
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。
削除
第五十九条
三犯以上の者についても、再犯の例による。
第六十条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
第六十一条
人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
第六十二条
正犯を幇助した者は、従犯とする。
従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
第六十三条
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
第六十四条
拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。
第六十五条
犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
第六十六条
犯罪の情状に酌量すベきものがあるときは、その刑を減軽することができる。
第六十七条
法律上刑を加重し、又は減軽する場合であっても、酌量減軽をすることができる。
第六十八条
法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
一
死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。
二
無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
三
有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
四
罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。
五
拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。
六
科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。
第六十九条
法律上刑を減軽すべき場合において、各本条に二個以上の刑名があるときは、まず適用する刑を定めて、その刑を減軽する。
第七十条
懲役、禁錮又は拘留を減軽することにより一日に満たない端数が生じたときは、これを切り捨てる。
第七十一条
酌量減軽をするときも、第六十八条及び前条の例による。
第七十二条
同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。
一
再犯加重
二
法律上の減軽
三
併合罪の加重
四
酌量減軽
削除
削除
削除
削除
第七十七条
国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
一
首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
二
謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は三年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一年以上十年以下の禁錮に処する。
三
付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三年以下の禁錮に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第三号に規定する者については、この限りでない。
第七十八条
内乱の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。
第七十九条
兵器、資金若しくは食糧を供給し、又はその他の行為により、前二条の罪を幇助した者は、七年以下の禁錮に処する。
第八十条
前二条の罪を犯した者であっても、暴動に至る前に自首したときは、その刑を免除する。
第八十一条
外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。
第八十二条
日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。
削除
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第八十七条
第八十一条及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。
第八十八条
第八十一条又は第八十二条の罪の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
削除
削除
削除
第九十二条
外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。
第九十三条
外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。
第九十四条
外国が交戦している際に、局外中立に関する命令に違反した者は、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第九十五条
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役又は禁錮に処する。
公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
第九十六条
公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法で無効にした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
第九十六条の二
強制執行を免れる目的で、財産を隠匿し、損壊し、若しくは仮装譲渡し、又は仮装の債務を負担した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第九十六条の三
偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札の公正を害すべき行為をした者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。
第九十七条
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。
第九十八条
前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
第九十九条
法令により拘禁された者を奪取した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第百条
法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。
前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第百一条
法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、一年以上十年以下の懲役に処する。
第百二条
この章の罪の未遂は、罰する。
第百三条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
第百四条
他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
第百五条
前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
第百五条の二
自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
第百六条
多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
一
首謀者は、一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。
二
他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
三
付和随行した者は、十万円以下の罰金に処する。
第百七条
暴行又は脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を三回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は三年以下の懲役又は禁錮に処し、その他の者は十万円以下の罰金に処する。
第百八条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第百九条
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
第百十条
放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第百十一条
第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
前条第二項の罪を犯し、よって同条第一項に規定する物に延焼させたときは、三年以下の懲役に処する。
第百十二条
第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。
第百十三条
第百八条又は第百九条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
第百十四条
火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第百十五条
第百九条第一項及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。
第百十六条
失火により、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。
失火により、第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
第百十七条
火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
前項の行為が過失によるときは、失火の例による。
第百十七条の二
第百十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の禁錮又は百五十万円以下の罰金に処する。
第百十八条
ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第百十九条
出水させて、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車又は鉱坑を浸害した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。
第百二十条
出水させて、前条に規定する物以外の物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
浸害した物が自己の所有に係るときは、その物が差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は保険に付したものである場合に限り、前項の例による。
第百二十一条
水害の際に、水防用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、水防を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第百二十二条
過失により出水させて、第百十九条に規定する物を浸害した者又は第百二十条に規定する物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、二十万円以下の罰金に処する。
第百二十三条
堤防を決壊させ、水門を破壊し、その他水利の妨害となるべき行為又は出水させるべき行為をした者は、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金に処する。
第百二十四条
陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第百二十五条
鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。
灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
第百二十六条
現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
現に人がいる艦船を転覆させ、沈没させ、又は破壊した者も、前項と同様とする。
前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
第百二十七条
第百二十五条の罪を犯し、よって汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、又は艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者も、前条の例による。
第百二十八条
第百二十四条第一項、第百二十五条並びに第百二十六条第一項及び第二項の罪の未遂は、罰する。
第百二十九条
過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三十万円以下の罰金に処する。
その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第百三十条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
削除
第百三十二条
第百三十条の罪の未遂は、罰する。
第百三十三条
正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
第百三十四条
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。
第百三十五条
この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第百三十六条
あへん煙を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
第百三十七条
あへん煙を吸食する器具を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第百三十八条
税関職員が、あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を輸入し、又はこれらの輸入を許したときは、一年以上十年以下の懲役に処する。
第百三十九条
あへん煙を吸食した者は、三年以下の懲役に処する。
あへん煙の吸食のため建物又は室を提供して利益を図った者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
第百四十条
あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を所持した者は、一年以下の懲役に処する。
第百四十一条
この章の罪の未遂は、罰する。
第百四十二条
人の飲料に供する浄水を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第百四十三条
水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
第百四十四条
人の飲料に供する浄水に毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者は、三年以下の懲役に処する。
第百四十五条
前三条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第百四十六条
水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源に毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者は、二年以上の有期懲役に処する。よって人を死亡させた者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第百四十七条
公衆の飲料に供する浄水の水道を損壊し、又は閉塞した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第百四十八条
行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
第百四十九条
行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、二年以上の有期懲役に処する。
偽造又は変造の外国の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
第百五十条
行使の目的で、偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を収得した者は、三年以下の懲役に処する。
第百五十一条
前三条の罪の未遂は、罰する。
第百五十二条
貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。
第百五十三条
貨幣、紙幣又は銀行券の偽造又は変造の用に供する目的で、器械又は原料を準備した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第百五十四条
行使の目的で、御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
御璽若しくは国璽を押し又は御名を署した詔書その他の文書を変造した者も、前項と同様とする。
第百五十五条
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
第百五十六条
公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。
第百五十七条
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
前二項の罪の未遂は、罰する。
第百五十八条
第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
第百五十九条
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第百六十条
医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、三年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
第百六十一条
前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
第百六十一条の二
人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
第百六十二条
行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者も、前項と同様とする。
第百六十三条
偽造若しくは変造の有価証券又は虚偽の記入がある有価証券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
第百六十三条の二
人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するものを不正に作った者は、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録を不正に作った者も、同様とする。
不正に作られた前項の電磁的記録を、同項の目的で、人の財産上の事務処理の用に供した者も、同項と同様とする。
不正に作られた第一項の電磁的記録をその構成部分とするカードを、同項の目的で、譲り渡し、貸し渡し、又は輸入した者も、同項と同様とする。
第百六十三条の三
前条第一項の目的で、同条第三項のカードを所持した者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第百六十三条の四
第百六十三条の二第一項の犯罪行為の用に供する目的で、同項の電磁的記録の情報を取得した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。情を知って、その情報を提供した者も、同様とする。
不正に取得された第百六十三条の二第一項の電磁的記録の情報を、前項の目的で保管した者も、同項と同様とする。
第一項の目的で、器械又は原料を準備した者も、同項と同様とする。
第百六十三条の五
第百六十三条の二及び前条第一項の罪の未遂は、罰する。
第百六十四条
行使の目的で、御璽、国璽又は御名を偽造した者は、二年以上の有期懲役に処する。
御璽、国璽若しくは御名を不正に使用し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用した者も、前項と同様とする。
第百六十五条
行使の目的で、公務所又は公務員の印章又は署名を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。
第百六十六条
行使の目的で、公務所の記号を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。
公務所の記号を不正に使用し、又は偽造した公務所の記号を使用した者も、前項と同様とする。
第百六十七条
行使の目的で、他人の印章又は署名を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。
他人の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。
第百六十八条
第百六十四条第二項、第百六十五条第二項、第百六十六条第二項及び前条第二項の罪の未遂は、罰する。
第百六十九条
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
第百七十条
前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第百七十一条
法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二条の例による。
第百七十二条
人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
第百七十三条
前条の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第百七十四条
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
第百七十五条
わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。
第百七十六条
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
第百七十七条
暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、二年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
第百七十八条
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をし、又は姦淫した者は、前二条の例による。
第百七十九条
前三条の罪の未遂は、罰する。
第百八十条
第百七十六条から前条までの罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条から前条までの罪については、適用しない。
第百八十一条
第百七十六条から第百七十九条までの罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
第百八十二条
営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
削除
第百八十四条
配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。
第百八十五条
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
第百八十六条
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第百八十七条
富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。
富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。
第百八十八条
神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。
説教、礼拝又は葬式を妨害した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。
第百八十九条
墳墓を発掘した者は、二年以下の懲役に処する。
第百九十条
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
第百九十一条
第百八十九条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第百九十二条
検視を経ないで変死者を葬った者は、十万円以下の罰金又は科料に処する。
第百九十三条
公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。
第百九十四条
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。
第百九十五条
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。
法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。
第百九十六条
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第百九十七条
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。
第百九十七条の二
公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
第百九十七条の三
公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
第百九十七条の四
公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
第百九十七条の五
犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第百九十八条
第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
第百九十九条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。
削除
第二百一条
第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
第二百二条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
第二百三条
第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。
第二百四条
人の身体を傷害した者は、十年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第二百五条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、二年以上の有期懲役に処する。
第二百六条
前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第二百七条
二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。
第二百八条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
第二百八条の二
アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで四輪以上の自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。
第二百八条の三
二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の懲役に処する。
第二百九条
過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第二百十条
過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
第二百十一条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
自動車を運転して前項前段の罪を犯した者は、傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
第二百十二条
妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。
第二百十三条
女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、二年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第二百十四条
医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する。
第二百十五条
女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
第二百十六条
前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第二百十七条
老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。
第二百十八条
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
第二百十九条
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第二百二十条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第二百二十一条
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第二百二十二条
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
第二百二十三条
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
前二項の罪の未遂は、罰する。
第二百二十四条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第二百二十五条
営利、わいせつ又は結婚の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第二百二十五条の二
近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。
第二百二十六条
日本国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。
日本国外に移送する目的で人を売買し、又は略取され、誘拐され、若しくは売買された者を日本国外に移送した者も、前項と同様とする。
第二百二十七条
第二百二十四条、第二百二十五条又は前条の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を収受し、蔵匿し、又は隠避させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第二百二十五条の二第一項の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され又は誘拐された者を収受し、蔵匿し、又は隠避させた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
営利又はわいせつの目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を収受した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
第二百二十五条の二第一項の目的で、略取され又は誘拐された者を収受した者は、二年以上の有期懲役に処する。略取され又は誘拐された者を収受した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、同様とする。
第二百二十八条
第二百二十四条、第二百二十五条、第二百二十五条の二第一項、第二百二十六条並びに前条第一項から第三項まで及び第四項前段の罪の未遂は、罰する。
第二百二十八条の二
第二百二十五条の二又は第二百二十七条第二項若しくは第四項の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。
第二百二十八条の三
第二百二十五条の二第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
第二百二十九条
第二百二十四条の罪、第二百二十五条の罪及びこれらの罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びに同条第三項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、営利の目的による場合を除き、告訴がなければ公訴を提起することができない。ただし、略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときは、婚姻の無効又は取消しの裁判が確定した後でなければ、告訴の効力がない。
第二百三十条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
第二百三十条の二
前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
第二百三十一条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
第二百三十二条
この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。
第二百三十三条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二百三十四条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
第二百三十四条の二
人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第二百三十五条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する。
第二百三十五条の二
他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。
第二百三十六条
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
第二百三十七条
強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。
第二百三十八条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
第二百三十九条
人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。
第二百四十条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は七年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
第二百四十一条
強盗が女子を強姦したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する。
第二百四十二条
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。
第二百四十三条
第二百三十五条から第二百三十六条まで及び第二百三十八条から第二百四十一条までの罪の未遂は、罰する。
第二百四十四条
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
第二百四十五条
この章の罪については、電気は、財物とみなす。
第二百四十六条
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
第二百四十六条の二
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
第二百四十七条
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二百四十八条
未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
第二百四十九条
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
第二百五十条
この章の罪の未遂は、罰する。
第二百五十一条
第二百四十二条、第二百四十四条及び第二百四十五条の規定は、この章の罪について準用する。
第二百五十二条
自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
第二百五十三条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
第二百五十四条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第二百五十五条
第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。
第二百五十六条
盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。
第二百五十七条
配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。
前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
第二百五十八条
公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
第二百五十九条
権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。
第二百六十条
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第二百六十一条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第二百六十二条
自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、又は賃貸したものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。
第二百六十二条の二
境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二百六十三条
他人の信書を隠匿した者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第二百六十四条
第二百五十九条、第二百六十一条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
○1
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から、これを施行する。
○2
第二十六条第二項の改正規定は、刑の執行猶予の言渡を受けた者がこの法律施行前に更に罪を犯した場合については、これを適用しない。
○3
第三十四条ノ二の改正規定は、この法律施行前に刑の言渡又は刑の免除の言渡を受けた者にもこれを適用する。
○4
この法律施行前の行為については、刑法第五十五条、第二百八条第二項、第二百十一条後段、第二百四十四条及び第二百五十七条の改正規定にかかわらず、なお従前の例による。
1
この法律の施行期日は、昭和二八年十二月三十一日までの間において政令で定める。
1
この法律は、昭和二九年八月三十一日までの間において政令で定める日から施行する。但し、刑法第一条第二項の改正規定及び附則第三項の規定は、公布の日から施行する。
2
この法律による改正後の刑法第二十五条ノ二第一項前段の規定は、この法律の施行前に犯された罪については、適用しない。但し、その罪とこの法律の施行後に犯された罪とにつき、刑法第四十七条又は第四十八条第二項の規定を適用して処断すべきときは、この限りでない。
1
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
2
この法律の施行前の行為については、なお従前の例による。
3
罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第百五条ノ二、第百九十八条第二項及び第二百八条ノ二第一項の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。
1
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
2
罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第二百六十二条ノ二の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。
1
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
2
この法律の施行前にした行為については、この法律による改正後の刑法第二百二十八条ノ二及び第二百二十九条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
1
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
2
この法律による改正後の刑法第四十五条の規定は、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、又は刑を免除する裁判がこの法律の施行前に確定した場合における当該数罪についても、適用する。ただし、当該数罪のすべてがこの法律の施行前に犯されたものであり、かつ、改正後の同条の規定を適用することが改正前の同条の規定を適用するよりも犯人に不利益となるときは、当該数罪については、改正前の同条の規定を適用する。
3
前項の規定は、この法律の施行前に確定した裁判の執行につき従前の例によることを妨げるものではない。
この法律は、公布の日から施行する。
(施行期日)
1
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、第一条中刑法第四条の次に一条を加える改正規定、第二条及び第三条の規定並びに次項の規定及び附則第四項中新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五十三年法律第四十二号)第二条第一項第十一号の改正規定は、国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約又は人質をとる行為に関する国際条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。
(経過措置)
2
改正後の刑法第四条ノ二の規定並びに人質による強要行為等の処罰に関する法律第五条及び暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ二第三項の規定(刑法第四条ノ二に係る部分に限る。)は、前項ただし書に規定する規定の施行の日以後に日本国について効力を生ずる条約により日本国外において犯したときであつても罰すべきものとされる罪に限り適用する。
(罰金等臨時措置法の適用)
3
罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第百六十一条ノ二及び第二百三十四条ノ二の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。
(施行期日)
1
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
(条例の罰則に関する経過措置)
2
条例の罰則でこの法律の施行の際現に効力を有するものについては、この法律による改正後の刑法第十五条及び第十七条の規定にかかわらず、この法律の施行の日から一年を経過するまでは、なお従前の例による。その期限前にした行為に対してこれらの罰則を適用する場合には、その期限の経過後においても、同様とする。
(罰金の執行猶予の限度に関する経過措置)
3
この法律による改正後の刑法第二十五条の規定は、この法律の施行前にした行為についても、適用する。
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条
この法律の施行前にした行為の処罰並びに施行前に確定した裁判の効力及びその執行については、なお従前の例による。ただし、この法律による改正前の刑法第二百条、第二百五条第二項、第二百十八条第二項及び第二百二十条第二項の規定の適用については、この限りでない。
2
前項の規定にかかわらず、併合罪として処断すべき罪にこの法律の施行前に犯したものと施行後に犯したものがあるときは、この法律による改正後の刑法(以下この条において「新法」という。)第十条、第十四条、第四十五条から第五十条まで及び第五十三条の規定を適用し、一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる場合において、これらの罪名に触れる行為にこの法律の施行前のものと施行後のものがあるときは、新法第十条及び第五十四条(同条第二項において適用する第四十九条第二項を含む。 )の規定を適用する。
3
前項の規定により同項に規定する新法の規定を適用した後の刑の加重減軽、刑の執行の猶予その他の主刑の適用に関する処理については、新法の規定を適用する。
(施行期日)
1
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条
この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(処分、手続等に関する経過措置)
第四十二条
この法律の施行前に改正前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条において同じ。)の規定によってした処分、手続その他の行為であって、改正後のそれぞれの法律の規定に相当の規定があるものは、この附則に別段の定めがあるものを除き、改正後のそれぞれの法律の相当の規定によってしたものとみなす。
(罰則に関する経過措置)
第四十三条
この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(経過措置の政令への委任)
第四十四条
この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条
この法律による改正後の刑法第三条の二の規定並びに附則第三条による改正後の暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条ノ二第三項及び附則第四条による改正後の人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)第五条の規定(刑法第三条の二に係る部分に限る。)は、この法律の施行前にした行為については、適用しない。
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
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